口蹄疫清浄化への道程
鹿児島大学 岡本嘉六
「口蹄疫の移動・搬出制限、7月16日にも解除」という政府現地対策本部長(農林水産副大臣)の発言で、それから3ヶ月経てば清浄国に復帰できると楽観視する方が多いのではなかろうか? 果たしてそうか? その後、山田農林水産大臣は次のように述べている(6月29日記者会見)。
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日向市、西キ市、国富町、宮崎市で7月の上旬中旬には、清浄、いわゆる制限解除まで、これらの地域はなっていくのではないかと思っておりまして、後は、ワクチンを接種した地域、これをどういう形で清浄化作業を進めていくかという形になっていくかと思います。 ただ、現在、やっぱり、その残された、仮にワクチン接種家畜が、今月中に全部埋却処分されたとしても、いわゆる糞尿とか、敷わら等々にウイルスが、まだ生きたまま、かなりの量、あの地域に付着していると考えておりますので、それから、まだまだ、いつ飛び火するか、いつ飛び火するか分からない、私自身は、ちょっと非常に心配しておりまして、何となく、まだ1、2件出そうな気がいたしております。・・・・ いろいろな疫学調査チームで、今回、民間の獣医さんも入れて、現地調査チームを私の指示で作らせて、現地へやっております。その中で、いろいろな報告を聞いておりますが、やっぱり、いろいろなことが分かってまいりました。そんな中で、やはり、人とか、車両等々の感染ルートというのが、かなり濃いのではないかと思っておりますが、そういった時、まだまだ油断できないというか、あそこに、あれだけ発生して、まだワクチン接種家畜も8千頭からいて、しかも、たい肥の量、糞尿の量が、半端じゃありませんで、2か月間ですから、まだそこに生きてるウイルスがいるわけで、こういう時、ちょっと気を緩めたら、本当に、それは拡散してしまって、どうなるか分からないという、非常に、私自身は、こういう時が危ないのだという危惧を覚えておりまして、何となく、そんな予感がするところです。 |
川南地区を中心として燃え盛った炎は半端でなく、日本の清浄化復帰の見通しは未だ立っていないのである。先ず、現状を認識しておくことが大切である。
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「ワクチン接種を行っていない口蹄疫清浄国」資格の停止 Suspension of "FMD free Member without vaccination" status 日本 宮崎県児湯郡都農町における口蹄疫発生に関するOIE日本代表から受取った2010年4月20日の報告に従って、2001年5月の決議(Resolution XVII)に関するOIE代表者世界総会によって認知された日本に対する「ワクチン接種をしていない口蹄疫清浄国」の資格は、即時に一時停止となった。
口蹄疫清浄国の一覧 |
発生地域に設けられた制限区域の解除は、日本の清浄化復帰と関連させて考えないとならない。「このまま新たな感染がなければ7月16日にも県内全域で移動・搬出制限区域を解除する予定」という報道が続いているが、川南地区を中心とする地域については、感染源となり得る「たい肥、糞尿」がまだ残っており、清浄化を確認する以前の段階にある。「県内全域」の規制を解除すれば、汚染が拡大する恐れがある。
日本の清浄化復帰を図るために「陸生動物衛生規約」の関連部分を説明する。
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緒言 国際陸生動物衛生規約において、口蹄疫(FMD)の潜伏期間は14日とする。 本章において、反芻動物にはラクダ科の動物(ヒトコブラクダを除く)を含む。 本章において、症例には口蹄疫ウイルス(FMDV)に感染した動物が含まれる。 国際貿易のため、本章はFMDVによる臨床徴候の発現のみならず、臨床徴候が発現していないFMDV感染についても取り上げる。 FMDV感染の発生とは以下のように規定される。 1. 当該動物やその動物に由来する製品からFMDVが分離同定された。または、 2. FMDVの血清型の1種以上について特異的なウイルス抗原やウイルス核酸(RNA)は、口蹄疫と合致する臨床徴候を示していようがいまいが、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連していようがいまいが、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがあろうがなかろうが、一頭以上の動物からのサンプルにおいて特定された。または、 3. ワクチン接種の結果ではないFMDVの構造蛋白または非構造蛋白に対する抗体が、口蹄疫と合致する臨床徴候を示している、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連している、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがある一頭以上の動物で特定された。 |
清浄化には、口蹄疫ウイルスが国内に存在していない(試験研究用を除く)ことを証明しなければならないのであり、「動物に由来する製品(a product derived from that animal)」には、未加工の原料も含まれる。また、「臨床徴候が発現していないFMDV感染」の対象には、「反芻動物にはラクダ科の動物(ヒトコブラクダを除く)を含む」のであり、当該地域に生息している野生反芻動物も口蹄疫ウイルスを保有していないことを証明しなければならない。川南地区や西キ市の山間部にある農場近辺にシカやイノシシが生息しており、家畜との接触の可能性があったことが報じられており、家畜・家畜副生物の清浄化検査が終了したら、それらの野生動物についても検査する必要があるだろう。そうしないと、日本から輸出する畜産物が口蹄疫ウイルスで汚染していないことを相手国に納得させることはできないだろう。とりわけ、米国は1929年以降発生がなく(Factsheet February 2007)、農業テロを警戒している状況下で、曖昧な妥協はしないだろう。
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8.5.8条 清浄資格の回復 1. ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯で口蹄疫またはFMDV感染が起きた時、ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯の資格を得るために以下の待ち期間の一つが求められる。 a. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策および血清学的発生動向調査が適用されている場合、最後の症例から3ヶ月。または、 b. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策、緊急ワクチン接種、および、血清学的発生動向調査が適用されている場合、全てのワクチン接種動物が食用と殺されてから3ヶ月。 |
「血清学的発生動向調査」が必須要件となっており、川南地区では同時平行的に実施されてこなかったし、今後の調査範囲をどうするかも決まっていない。発症しないか、または、軽症で見過ごされた抗体陽性牛がこれから摘発される可能性は皆無ではないだろう。こうした清浄化への道程を考えた時に、宮崎県内全域の制限を解除してしまったら、清浄化確認作業に大きな支障をきたす恐れがある。