ワクチン接種地帯外周における清浄化検査は?

鹿児島大学 岡本嘉六

 

日本の口蹄疫清浄資格の回復に向けて、630日に「口蹄疫清浄化への道程」で次のように書いた。

血清学的発生動向調査」が必須要件となっており、川南地区では同時平行的に実施されてこなかったし、今後の調査範囲をどうするかも決まっていない。発症しないか、または、軽症で見過ごされた抗体陽性牛がこれから摘発される可能性は皆無ではないだろう。こうした清浄化への道程を考えた時に、宮崎県内全域の制限を解除してしまったら、清浄化確認作業に大きな支障をきたす恐れがある。

しかし、「27日にも全域解除へ=宮崎の家畜移動制限−口蹄疫」といった報道が後を絶たない。こうした報道の出所はどこだろうか? 農林水産省の「口蹄疫に関する情報」をいくら探しても、ワクチン接種地帯外周における清浄化検査については何も触れられておらず、宮崎県全域での清浄化についても言及されていない。「宮崎県の口蹄疫に対する防疫措置について (平成22年7月8現在)」には、次の記載がある。

ワクチン接種状況

移動制限区域内の対象家畜(牛45,971頭、豚79,606頭)へのワクチン接種について、526日までにほぼ全ての接種を完了。

65日よりワクチン接種家畜の殺処分を開始。

630日、ワクチン接種後処分対象家畜について、すべての処分・と体の埋却を終了。

発生農場周辺における措置

半径10 km以内における移動制限の継続中。 

半径1020 km以内における搬出制限の継続中。

 移動制限区域のうち、川南町近辺では、すべての牛・豚を対象に、殺処分を前提としたワクチン接種を実施(ワクチン接種地域の地図については、「発生場所」をご覧ください)。

ワクチン接種については、「より詳しく知りたい方へ (PDF:126KB」に次のように記載されている。

ワクチン接種動物は、@感染を完全に防御できず、A感染動物はワクチン接種動物との識別が難しいことから、本病を見逃し、感染源となる可能性がある。

すなわち、ワクチン接種地帯については感染が起きていた可能性があり、しかも、ワクチンの効果によって症状が抑えられ発症を確認できなかった可能性がある。したがって、ワクチン接種地帯の外周についての清浄化検査が不可欠であると考えざるを得ない。このことは農水省が熟知しているところであり、口蹄疫清浄化への道程」で触れたように、大臣は排泄物等の処理も残されており、未だ発生が続く可能性を指摘している。これらのことを考えると、農水省は清浄化検査の段階に至っていないと判断しているものと思われる。

上記の「発生場所」を基に、半径10kmの移動制限地区を赤丸で、発生農家から半径3km清浄化検査地区を青丸で示した。ワクチン接種地帯(太い赤曲線)ついては他地区とは比べ物にならない多数の発生があった訳だから、外周の3km以上について抗体検査を実施すべきであろう。現在までに抗体検査が行われた青丸の地域と重なるところもあるが、青波線で示した外周の少なくとも6km程度は抗体検査を実施していただきたい。

宮崎県の口蹄疫対策本部長は知事であるが、日本の清浄化について責任を持っているのは国の口蹄疫対策本部であり、適正な対処をしていただけると信じている。ことは宮崎県だけの問題ではない。